
現在、イタリア文化会館のエキジビションホールでは、イタリアの著名な人類学者であるフォスコ・マライーニが60年前に撮影し、出版された著作『海女の島 舳倉島』のなかから、海女の写真を中心に30点が展示されています。
フォスコ・マライーニ(1912-2004)は民俗学や東洋学の分野で多くの業績を残し、また著述家、登山家、写真家としても活躍するなど、その活動は多岐にわたっています。1939年に北海道大学でアイヌ研究をするために初来日し、戦後イタリアへ帰国しますが、その後もたびたび日本を訪れては日本に関する論文や著作を多くのこしています。
デジタルカメラなど現代のように便利な機材が豊富ではなかった時代に、防水用のケースを手作りするなどして工夫して撮影された様々なマライーニの作品では、60年も前の海女たちの様子を目にすることができ、記録としてはもちろん、芸術性の高い作品としても評価を受けています。
“FOSCO, TETI E IL VETERINARIO GARFAGNINO” di Oishi Kuranosuke – Flickr: FOSCO, TETI E IL VETERINARIO GARFAGNINO. Con licenza CC BY 2.0 tramite Wikimedia Commons.
フォスコ・マライーニ Fosco Maraini
1912年フィレンツェ生まれ。高校卒業の頃から写真に興味をもち始め、未来派写真展へも出品する。1936年にはフェッラーニア写真コンクールで最優秀賞を受賞した。1937年、G.トゥッチのチベット遠征に参加。1938年にフィレンツェ大学を卒業し、翌年、北海道大学でアイヌ研究をするため来日した。終戦後イタリアに帰国。その後たびたび日本を訪れた。1950年代にはカラコルム山脈のガッシャーブルムIV峰やヒンドゥークシュ山脈の高峰サラグラールに登頂した。訪れたそれぞれの地で撮った写真は高く評価されている。2001年には東京でフォスコ・マライーニ写真展「イル・ミラモンド-レンズの向こうの世界 60年間のイメージの記録」が開催される。2002年、90歳を記念して、フィレンツェ市がヴェッキオ宮殿五百人広間で祝賀行事を行った。
2004年没。蔵書や25,000点を超える写真は、フィレンツェのG.P.ヴィッシュー文庫が管理している。勲三等旭日中綬章(1982)、国際交流基金賞(1986)受賞。日本山岳会名誉会員でもあった。翻訳された著書に、『チベット そこに秘められたもの』 Segreto Tibet, 1951(1958年, 理論社)、『海女の島 舳倉島』 L’isola delle pescatrici, 1960(1989年, 未来社, 新装版2013年)、『随筆日本 イタリア人の見た昭和の日本』 Ore giapponesi, 1957(2009年, 松籟社)など。
インフォメーション
日程: 2015年6月16日 – 2015年6月30日
時間: 11時~18時 (日曜休館 )
場所: イタリア文化会館 エキジビションホール
主催: イタリア文化会館、ルガーノ文化博物館
お問い合せ:イタリア文化会館
Tel. 03-3264-6011(内線13, 29)